立退料について

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

立退料とは、賃貸人が賃借人に対して建物の明渡しを求める際に支払う金銭的補償のことを指します。これは、賃借人が退去によって被る不利益を補填する目的で支払われるものであり、特に事業用物件では営業損失や移転費用などが問題となることがあります。

立退料が問題となる場面

立退料が争点となるのは、主に賃貸人側の事情で、賃貸人から賃借人に対して契約更新拒絶や解約申入れを行うケースです。
借地借家法では、賃貸人が契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れる場合には「正当事由」が必要とされます。

「正当事由」には次のようなものがあります。

  • 建物の老朽化による建替え
  • 再開発による建物取り壊し
  • 自己使用目的

「正当事由」は、賃貸人側の事情と賃借人側の事情を総合考慮して、賃借人に不利益を与えてでも建物の明け渡しを認めるほどの事由があるかどうか、によって決まります。上記の事由を補完する要素として、賃借人の金銭的な不利益を小さくするという立退料の支払いが重要な意味を持ちます。

立退料が問題とならない場合

逆に、賃借人から賃貸人に対して更新拒絶や解約申入れを行うケース、賃借人に賃料不払い等の債務不履行があるケースでは、立退料が争点となることはほとんどありません。

立退料の構成要素

立退料の金額は法律で明確に定められているわけではありませんが、一般的には以下の要素を考慮して算定されます。

  • 移転費用(引越し費用、敷金・礼金、一定期間の家賃差額、内装工事費など)
  • 営業損失(事業用の場合)
  • 借家権価格(不随意の立退きによって失われる経済的利益)
  • 精神的損害や生活の不安定化に対する補償

立退料金額決定のポイント

立退料は法律で明確にいくらとは決まっていません。
しかし、立退料が上記のように「正当事由」を補完する要素であることや上記のような構成要素から、その金額決定においては以下の点が重視されます。

  • 正当事由の有無と補完の必要性
  • 賃借人の生活や営業への影響(賃借人の被る経済的不利益)
  • 円満な解決を目指す姿勢

賃貸人と賃借人の交渉によって立退料が決められなければ、賃貸人から賃借人への明渡訴訟において、裁判所が正当事由の有無等を検討の上、「〇円と引き換えに建物を明け渡せ」といった引換給付判決によって決せられます。

まとめ

立退料は、賃貸人と賃借人の権利・利益のバランスを図るための重要な制度です。法的な根拠や過去の裁判例を踏まえ、適切な対応を行うことが求められます。
立退きに関するトラブルを未然に防ぐためにも、事前の準備と専門家への相談が有効です。

弁護士 後藤 壮一

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