交通事故による脊髄損傷(重度後遺障害への法的対応)

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こんにちは。弁護士の寺野朱美です。

交通事故によって脊髄を損傷し、四肢に麻痺等の重度の障害を負った場合、被害者の生活は一変します。
日常生活の介助が必要となり、就労も困難になることが多く、損害賠償請求は高額かつ複雑なものになります。

脊髄損傷とは

脊髄とは、脳から体中をめぐる神経が束になって集まっているものです。
それを保護する骨が脊椎です。
脊髄は、その位置によって、頸髄(C1~8)、胸髄(Th1~12)、腰髄(L1~5)、仙髄(S1~5)、尾髄(Coc.1)に分けられています。
交通事故のような強い外力によって脊髄を損傷すると、各神経が司る運動機能や感覚機能が麻痺してしまいます。

後遺障害等級の認定

脊髄損傷による麻痺のうち、四肢麻痺や対麻痺(両上肢または両下肢の麻痺)などは、自賠責保険の後遺障害等級で最も重い別表1の1級または2級に該当する可能性があります。
その他麻痺の重さにもよりますが、概ねの目安として、四肢麻痺で3級以上、対麻痺で5級以上、単麻痺(上肢又は下肢の一肢の麻痺)で5級~9級、その他軽微な麻痺は12級となります。

等級の認定にあたっては、症状にあわせて、感覚テスト、徒手筋力テスト、反射、自律神経障害の有無等による高位診断、MRIやCT等による画像診断、体性感覚誘発電位(SEP)、脊髄感覚誘発電位(SSEP)、運動性脊髄誘発電位(MEP)等による電気生理学的診断が必要になります。

損害賠償の項目と算定方法

重度後遺障害の場合、損害賠償額は数千万円〜数億円を超えることもあります。
主な項目は以下のとおりです。

➀後遺障害慰謝料

精神的苦痛に対する賠償です。裁判基準では以下のような金額が目安です。

  • 1級:2,800万円
  • 2級:2,370万円
  • 3級:1,990万円
  • 4級:1,670万円
  • 5級:1,400万円

(※裁判基準は地域によって差があります)

➁逸失利益(将来の収入減)

事故がなければ得られたはずの将来の収入の減少分です。以下の式で算定されます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数(ライプニッツ係数)

例:年収500万円、労働能力喪失率100%、就労可能年数20年
500万円×100%×14.8775=7438万7500円

➂介護費用

後遺障害の程度に応じて、常時介護なのか随時介護なのか、職業付添人なのか近親者付添人なのかによって金額は異なります。

職業付添人について必要性が認められれば全額が認められることは当然ですが、家族が介護をする場合でも、常時介護の場合には日額8,000円程度(例えば20年で約5800万円)が認められ得ることは知らない方も多いです。

なお、自宅での介護が困難であるため介護施設に入居する場合には、施設利用料等が介護費用として賠償の対象となります。

➃住宅改修・車両購入改造費

自宅介護の場合に自宅をバリアフリー化するための改修費用、車椅子対応車両の購入改造費用等が認められる場合があります。

➄近親者慰謝料

被害者に重度後遺障害が残った場合、その近親者(父母、配偶者、子、兄弟姉妹等)にも慰謝料が認められる場合があります。
関係性や重症度により、100万円~数百万円になることがあります。

➅その他

この他、後遺障害が残らない怪我で請求できるような通常の損害(入通院慰謝料、休業損害、通院交通費、治療費等)も当然請求できます。

弁護士の役割

重傷案件では、賠償総額が大きくなるため保険会社が提示する賠償額が裁判基準より大幅に低いことが多く、また、交渉も難航する傾向があります。
弁護士が関与することで、適正な賠償獲得の可能性が高まります。

まとめ

脊髄損傷による麻痺は、被害者本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を及ぼします。
適正な後遺障害等級の認定と将来にわたる損害賠償の確保は生活再建のために不可欠です。
重傷事故に遭われた方は、早期に弁護士へ相談し、専門的な支援を受けることが重要です。

弁護士 寺野 朱美

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