家事労働に対する休業損害

こんにちは。弁護士の寺野朱美です。

交通事故に遭った際、専業主婦や兼業主婦の方、または介護をなさっている方の家事労働に対して「休業損害」を請求できることは、一般にはあまり知られていません。しかし、家事労働にも経済的価値があると認められており、法的にも損害賠償の対象となります。

休業損害とは

「休業損害」とは、事故によって仕事や家事ができなくなった期間の「収入減少分」を補償する賠償金です。家事労働は収入を伴わないものの、家族の生活を支える労働として、裁判例でも経済的価値が認められています 。

専業主婦の方の算定方法

専業主婦の方の場合、厚生労働省が出している賃金センサスに基づいて女性労働者の平均賃金を基礎収入として次のように計算します。

基礎収入額 × 休業日数

  • 基礎収入額:厚生労働省「賃金センサス」に基づく女性労働者の平均賃金
    (令和5年現在、約10,949円/日)
  • 休業日数:医師の診断書に基づき、家事が制限された期間
    例:骨折により60日間家事ができなかった場合
    →10,949円×60日=65万6940円

むちうちなどで100%動けなかったわけではないものの、家事労働に影響があった場合には、賃金センサスの日額をそのまま使うのではなく、症状や診断書に基づき、家事労働に影響のあった割合を算出し計算します。

兼業主婦の方の算定方法

正社員やパート勤務などの収入がある場合は、原則として、実収入と賃金センサスを比較し、いずれかの高い方を基礎として算出します。
ただし、たとえば外でのお仕事が事務仕事等、比較的身体に負担が少ないものであるため、事故のために休むことが少なくて済んだ場合でも、家事労働は肉体労働ですから普段どおりにはできなかったり家族の助けを借りたりした期間が長かったということもありえます。そのような事例では、医師の診断書等を元に、どれくらいの期間、家事労働にどの程度影響があったのかを検討し、家事労働に影響のあった部分だけ賃金センサスに基づいて算出して請求できる可能性もあります。

自賠責保険との違い

自賠責保険では、休業損害の基準額が1日6,100円と設定されています。任意保険会社はこの基準で提示することが多いため、弁護士が介入することで金額が大きく変わることがあります。

主夫の方

男性で家事労働に従事している方についても、裁判例上、同じ基準で休業損害が認められています。

まとめ

家事労働に関する休業損害の請求については、お怪我の程度や家事労働に影響していることの立証等、専門性が必要な部分も多いです。お困りの方は、一度弁護士にご相談ください。

弁護士 寺野 朱美

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